侘び寂び
2025.05.16
私が好きな日本語は「侘び寂び」です。
派手さのない、古びたものや静かな空間に美しさを見出すという感覚は、日本に来てから学び、強く感銘を受けました。
完璧でないものを愛する感性、大切にする心に、優しさと深さを感じます。
私はもともと「物事は完璧でなければならない」という考え方が根強くありました。
仕事においても、日常生活においても、少しのズレやミスすら気になってしまう性格です。
けれども、日本で暮らすようになって、「侘び寂び」という美意識に触れ、少しずつ価値観が変わってきました。
古くてひび割れた器、色あせた写真、形がいびつな手作りの品…。
それらには、完璧なものにはない“味わい”や“深み”が宿っていて、とても魅力的に感じるようになったのです。
今では、「完璧でないこと=個性」と捉えるようになりました。
そして、世界に存在するあらゆるもの――人も、物も、風景も――その違いや不完全さが織りなす多様性こそが、美しさの本質ではないかと感じています。
侘び寂びの世界観は、私に「そのままの美しさを認める心」を教えてくれました。
完璧である必要はない。
ただそこにある存在を、静かに受け入れ、愛でること。
その優しいまなざしが、世界をまるで一枚の美しい絵のように見せてくれるのです。